日本キャンプ協会

From…雪の中でのキャンプ

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 毎年2月、大学の授業でテレマークスキーに行きます。実習は34日で行うのですが、スキー場のゲレンデを滑ることよりも、お弁当を持って、雪の野山にスキーハイキングに出かけることをメインの活動としています。雪の野山には楽しいことがたくさんありますが、この楽しさに気づかせてもらったのは、私が学生時代に体験した雪の中での1週間のキャンプがきっかけでした。

 もうずいぶん昔のことになります。私がまだ大学生の頃、毎年、雪の中で1週間のキャンプ実習をしていました。この実習の特徴は、1週間分のプログラムも食事も活動もすべて自分たちで考えるというものでした。スキーもすれば、雪遊びもするし、野山のハイキングもする。とにかく、雪の中でできそうなことは何でもやってみるキャンプです。

 宿泊は、もちろんテントが基本。しかし当時の冬用テントは、雪の壁でテント周りに囲いをしてもとても寒いので、キャンプ途中から、寝るときはテントより暖かい、といいますか、テントの中より寒くない雪洞やイグルーを作って、みんなそちらに寝ていました。じゃんけんで負けた人が、その日はテントに寝て、夜中にテントの雪下ろし役をしたりしていました。このキャンプを通して、冬のキャンプの仕方、雪の中での過ごし方を身につけることができました。

 さらに、雪の野山の自然の見方、楽しみ方もたくさん身につけていったように思います。山に入れば、ツキノワグマが秋にブナの実を食べるため幹をよじ登った時の爪痕や、ドングリを食べるためミズナラの梢近くに作った熊だなを見つけることができますし、真っ白な野ウサギやどこまでも続くキツネの足跡に出会うこともあります。ヤマガラやゴジューカラのどこか寂しそうな鳴き声やキツツキが幹をこつこつこつと叩く音にも出会えます。近くの集落まで下りて行きますと、茅葺き屋根の軒先まで雪で埋まるような静まりかえった村の様子を眺めつつ、地元のおいしい手打ちそばも堪能できます。

 このキャンプでは、それまで知らなかったことを教えてもらって初めて知ることの面白さ、その教えてもらったことに、今度は、自ら気づいてわかることの楽しさを学んだように思います。それ以来、毎年、雪の野山に出かけては、いろんな事に気づいたり、見つけたりする楽しみを味わっています。 


CAMPING152号より転載