日本キャンプ協会

キャンプの効果と意義

(1)現代社会と子どもたち


スマホや人工知能(AI)などの開発と普及、世界のグローバル化は、私たちの暮らしやコミュニケーションのあり方を大きく変化させました。


子どもたちは、いつの時代でもたくましく育っていきますが、一方で、このような時代ならではの課題も取り上げられています。政府の中央教育審議会などでは、これまで子どもたちの課題として、対人関係が希薄で異年齢や異世代との交流がないこと、自然体験・生活体験等の直接体験が不足していること、また、基本的な生活習慣が身についていないために学習意欲が低く、コミュニケーション能力も低下していることなどが課題としてあげられてきました。体力や運動能力の低下も指摘されています。そして、これらの課題解決に必要なこととして「生きる力」を育むことや生活体験、社会体験、自然体験の機会を増やすことの必要性が繰り返し述べられています。


(2)キャンプの教育効果


3キャンプの教育効果 現代の子どもたちに必要されている多くの体験は、実は、キャンプ※の場面ではよく目にすることができるものばかりです。キャンプには、多くの体験の場が用意され、高い教育的効果が期待されています。


キャンプの教育効果に関しては、これまで多くの事が研究で明らかにされています。大きく分けますと、三つの側面での効果が明らかにされています。


一つ目が、個人個人の成長に関わる効果です。キャンプでは、いろいろな場面で自ら何かにチャレンジしたり、仲間を励ましたり、時には我慢したりといった場面が用意されています。このような場面を通じて、子どもたちの心の中に自尊感情や自己効力感、達成意欲、道徳心などが育まれていきます。


キャンプの教育効果

二つ目は、コミュニケーション能力、人間関係力の向上です。集団や仲間同士でのキャンプ生活では、一緒になって楽しく遊ぶことはもちろんですが、自分と異なる意見の人たちと一緒に行動することや、話し合いをして何かを決めることなど、さまざまな交流や意見交換の場があり、そのことが個人のコミュニケーション能力、人間関係力を向上させます。


そして、三つ目は、環境意識や自然認識力の向上です。キャンプでは、近くの海や川で遊んだり、森の中の大きな樹木に直接触れたり、また、里山や地域での暮らしそのものを体験したりするなど、自然や地域での暮らしと直接触れあう活動も多く用意されています。これらの活動を通して、環境意識や自然認識力が養われていきます。
※日本キャンプ協会発行の「キャンプ研究」、日本野外教育学会発行の「野外教育研究」国立オリンピック記念青少年総合センターの研究紀要「青少年教育フォーラム」などには、キャンプの研究論文や研究報告がたくさん掲載されています。


(3)キャンプをすることの意義


キャンプをすることの意義 組織キャンプには一人ひとりを成長させる力があります。


安心・安全で、より質の高い組織キャンプとは、十分に準備、計画された(Organized)プログラムを持ち、小集団による民主的共同生活や信頼できる指導者と良質な自然環境が用意されているキャンプのことです。


そのような、キャンプ生活の中では、グループで何かを成し遂げ、解決する場面、苦しいことや大変なことに自らチャレンジして成功する場面、本物の自然や自然物に直に触れる機会、グループや参加者がおかれた状況をよく把握し、支援ができる指導者、仲間と一緒に寝泊まりし生活すること、仲間と一緒に自分たちの暮らしを作る場面など、多くの教育的な場が用意され、その場を指導者が有効に活用することで、キャンプに参加した子どもたち一人ひとりの成長がうながされていきます。


コミュニケーション能力、人間関係力を育成します

キャンプでは、人と人とのコミュニケーションのあり方や、根本的な人間関係について体験を通して直接学ぶ場が豊富に用意されています。インターネットやスマホ、AI(人工知能)の開発などは、私たちの生活に急激な変貌をもたらしています。特に、人々のコミュニケーションのあり方は大きく変化しました。


たとえば、ともだち関係とは、子どもたちの間でお互いの感情や思いを互いに直接出し合うことを通して育まれていくものですが、今、このともだち関係づくりでつまずく青少年も出てきています。仲間との情報の共有化を過度に意識するあまりに、表面的であたりさわりのない関係性を意図的に保ったり、友人関係を作ることを拒んだり、あるいは、まったく作れなくなってしまうという弊害も生まれつつあるようです。スマホやインターネット依存症の問題も出現しています。


友人関係の希薄化、コミュニケーション能力の低下、ネットへの過度の依存といった現代的な課題は、ますます情報化、デジタル化していく社会背景とも大きな関係があると思われます。 これらの弊害をなくすためには、自らの目で確かな情報を見極めることや課題を自ら見つけ解決していく能力、他者を受け入れつつ自己の考えや気持ちを相手に直接伝えられるコミュニケーション能力などが必要となってきます。キャンプには、日常生活では減少しているこれらの場面が豊富に用意されています。


自然観が育まれます

私たち日本人は、豊かな自然環境と文化的基盤を背景とした独自の自然観や自然認識力を持っています。日本的な自然観とは、稲作を中心とした暮らしや、里山での循環型の暮らし、また、海、山、川での農林漁業を中心とした暮らしなど、それぞれの暮らしの中で長い時間をかけて形作られてきた自然の見方、感じ方であり、これは、世界に誇ることができる素晴らしい能力です。私たち日本人は、このような自然観をこれまでは、日常の生活の中で、知らず知らずの間に身につけていましたが、子ども達が今後も日常生活の中でこのような自然観を身につけていくことができるかどうかは、はなはだ疑問です。


キャンプは、子どもたちの体験不足を補う場としての効果ばかりでなく、私たち日本人が持っている独自の自然観を身につける場としての機能もあわせもっているのです。


地域や環境について学びます

NPO法人や地域団体の中には、学校の教育活動や特別活動の一環として、キャンプや環境教育事業などを展開している団体もあり、家庭と学校と地域が一体となった連携事業が行われるようになってきています。


日本の全国各地で、急激な高齢化のため伝統行事を継続できない地域が増え、人々が集い交流しあう場も失われつつあります。そのような中で、NPO法人や各団体が地域の伝統と機能を受け継ぎ、新しい地域作りに貢献しているケースも増えています。キャンプは、地域の暮らしや食文化、里山文化など、すぐれた文化体験の場ともなり、また、環境教育の場としてもきわめて有効です。自然環境は、われわれの生活・文化・経済にとってなくてはならないものであり、人間社会全体の発展の基盤であることを理解する場としてもキャンプは最も適している場の一つです。


キャンプと防災教育

阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震等の大きな地震災害に加え、各地の集中豪雨による水害や、台風による風水害など、近年の日本では、毎年のように、どこかで大きな災害が発生しています。


このようなとき、震災直後の現場や避難所などでは大混乱に陥ることが多く、避難所での暮らしを落ち着かせることや支援物資の配布などをいち早く行う必要から、市民ボランティアの手を借りて急場をしのぐということが何度も見られてきました。このようなとき、キャンプ関係者が持つテント生活技術や屋外で暮らすための技術、現場の人々をコーディネイトする能力や組織をマネジメントする能力が大いに活かされてきました。キャンプ関係者が持つ現場をマネジメントする能力や避難所内での大きな集団の暮らしを運営するための能力は、行政をはじめ各方面から高く評価され支持されてきています。


安全教育や防災教育の視点、あるいは災害時のサバイバルといった視点からも、いま、改めてキャンプを見直す動きが全国に広がり始めています。


Camping for All =すべての人々を対象とした楽しいキャンプをめざして=

自然の中での寝起き、野鳥のさえずり、テントやキャビンでの生活、かまどでの火おこしや野外調理、一日中飽きずに楽しめる活動、小さな火を囲んでの仲間との語らいや夜を徹しての会話、夜の闇と静けさ、冒険的な活動へのチャレンジや涙、充実感、登山中に遭遇した激しい暴風雨など、キャンプでは、一生の思い出となって強く心に残ることにたくさん出会います。このような出会いと思いが人の心を動かし、それがまた、かけがえのない心の財産となっていきます。


日本キャンプ協会では、全ての人々を対象とした、あらゆるタイプのキャンプを広く社会に普及・振興していきたいと考えています。家族で楽しむファミリーキャンプや仲間で楽しむキャンプ、子ども会キャンプ、地域イベントのキャンプ、幼児キャンプ、シニアキャンプなどさまざまなキャンプがありますので、それぞれのやり方、楽しみ方で、どうぞ、自分にあったキャンプを楽しんでいただきたいと思います。

本協会では社会のさまざまなニーズに応えるべく、皆さまからのキャンプ相談や指導相談にも応じていますので、いつでも気軽にご相談、お問い合わせ下さい。

※ここでの「キャンプ」は主に「組織キャンプ(Organized Camping)」についてを指しています。