日本キャンプ協会

From…温かなキャンプの共同体

142from.JPG 今、たくさんのボランティアが東日本大震災の被災地で動している。私のまわりでも、多くの若者が旅立っていく。彼らは、被災者支援という大きな目的を達成するために被災地へ向かうのだが、結果として、その経験を通してさまざまな成長をする。「大学生になってから、こんなにたくさんの人と話したのは初めてだった」という感想などは、ボランティア活動の持つ自己成長をうながす力を裏付けるものだろう。多くの若者が大阪からの10 時間あまりのバス旅のつらさを乗り越えて、再び参加することを希望している。

 被災地で活動するボランティアたちが困っていることに、宿舎不足と寝具の調達がある。市街地の多くの建物が津波の被害を受けている地域では、泊まる場所がなかなか見つからない。その結果、少し内陸に入った地域の公民館や小学校の体育館などでゴロ寝をすることになる場合が多い。
 先日も、そんな若者たちの要望を受けて、知り合いのキャンプ場に寝袋を借りに行った。利用予定を確認しながら、1 枚あたり数百円の洗濯代だけ払ってくれればよいと、こころよく貸し出しに応じてくれた。そして帰途につくと、追いかけるように電話がかかってきて、お金はいらないという。洗濯屋さんにその話をしたら、若者のために洗濯代をタダにしてくれたというのだ。
 被災地に行く前から温かい心に触れ、若者たちは勇んで旅立った。

 一方、ここ大阪にもたくさんの方が避難してきている。慣れない土地で暮らす子どもたちのために夏に咲く花を植えようとしたら、キャンプ仲間がアサガオの種に鉢、土に肥料まで届けてくれた。そんな子どもたちとキャンプもしたいなと思ったら、利用費を無料にしてくれるキャンプ場も現れた。
 他人の困難を見過ごしに出来ない若者に、その若者の成長を支えようという市民、それらをつなぐ経験豊かな大人たち。キャンプの共同体はそんな温かい世界だ。日本キャンプ協会が朝日新聞厚生文化事業団、日本YMCA 同盟と進めているグリーフ・キャンプの取り組みも、日本の人たちのために何かしたいという、世界中のキャンプ仲間の温かい支援を受けている。
 このような温かさが、被災地へまっすぐに届くことを願っている。

CAMPING 142号より転載
写真提供:桃山学院大学