from…すべての一人ひとりに
この言葉には、「すべての人にキャンプを経験してほしい」、「それぞれの人がキャンプでの経験を生かして、豊かな人生を得てほしい」という思いがあります。そしてそのことが「共に生きる社会」を創出することにつながればという願いを持っています。
ただ、この「すべての人」にというのが曲者でもあります。
キャンプが終わった時に、「みんな楽しそうだったね」「みんなが喜んでいたね」と、ふりかえりをすることがあります。ところが「みんな」という言葉でひとくくりにしてしまうと、個が大多数に埋没してしまいます。10人、100人、1,000人という「みんな」の一人ひとりに思いを寄せてキャンプが準備され、実施されることが重要であるのは、疑いの余地はありません。しかし、言葉だけで終わっていないかと、いつも自分自身を戒めています。
先日もある方のお話の中で、以前にテレビでよく放送されていた「いのちは大切です。いのちを大切に。そんなこと、何千何万回言われるより”あなたが大切だ”と誰かに言ってもらえるだけで生きていける」という公共広告のメッセージに感銘を受けられたとありました。
今日の社会状況を俯瞰し、さまざまな課題をもつ青少年に思いを寄せる時に、「みんな」に向けたきれいな言葉だけでなく、「あなたは大切な人です。私にとって、私たちにとってあなたは大切な宝です」、「あなた自身を大切にしてください」と私たちが伝えることが大切であると思います。それをキャンプという大きな資源を用いて、リーダーとメンバーが寝食を共にし、また共に汗をかき、泣き、笑い、感動をする中で、一人ひとりに伝えることができればすばらしいことです。そうしてメッセージを受け取った一人ひとりは自信を持つことができる、その可能性の高さを確信しています。
伝える思いを持った指導者を育て、さまざまな環境設定をして、「すべての一人ひとり」にキャンプを提供し続けることが私たちの責務だと思っています。
CAMPING 139号より